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2012年7月11日アーカイブ

バクマン.JPG 「BAKUMAN(バクマン。)」(大場つぐみ原作、小畑健漫画、集英社)最終20巻読了。
 
 「ONE PIECE」が読みたいがため、私より年は若いけど先輩の工務部のM氏からジャンプを数週間分ずつもらっては読んでます。
 正直、ジャンプ掲載の作品って私のような年長者には途中から入っていくのが難しい作品が多くて、全作品を読んでいるわけではないんですが。
 いつも真っ先にワンピ、次に「こち亀」(何年経っても面白いのがすごい)。
 そして、その次に探して読んでいたのが「バクマン。」でした。

 小畑さんの絵はやっぱり見やすくて話に入っていきやすい(「デスノート」は読んでないんですが、「ヒカルの碁」は大好きで全巻持ってます)。
 それに、元々創作の現場を見せてくれる作品は好きなので、興味深く読んでいました。

 本誌で連載が終了してから。
 まとめて読みたくなって、レンタルコミックを利用しながら1~18巻まで一挙に読み、ちょっと間をあけて19巻。
 この20巻はレンタルに出るのが待てなくて、購入して読んでしまいました。
         
 いろんなテーマを含んだ作品なので、それぞれの段階でそれぞれの感想を何回かに分けて書いていきたい気がしますが。

 ともかく最終20巻を読み終えての感想は、まず。
 きれいにまとまった大団円ですね~。
 スタート時に期したラストに向かって、大きな螺旋を描くようにきれいに還ってきた、という感じ。
 ジャンプコミックスは各巻にタイトルがついているのが特徴ですが。
 「バクマン。」最終20巻のタイトルは、「夢と現実」。
 第1巻と同じでした。

 夢。現実。
 この2つの言葉は、その落差を強調するために並べて使われることが多いと思います。
 1巻の段階では確かにその通り、「夢」と「現実」との距離の大きさを表していました。
 しかし、20巻では。
 10年前に未来へ投げた「夢」のボールに、
 「現実」の彼らが追いついた。
 「夢」とぴったり重なった「現実」が、
 いま描かれるのです。

 1巻、中学3年生のサイコーとシュージン、それに亜豆美保の3人が、はるか彼方へ広がる未来へ向かって、全力で投げた「夢」というボール。
 それを、
 全力で走って追いかける日々。
 10年という時間を無心に走り抜けた彼らは、
 間違いなくその場所へと到達。
 追いついた「夢」のボールを、両手を広げてしっかりとキャッチしたのであった...。
 というたとえを書きたくなるような。
 いいタイトルだったと思います。
(でもホントいうと、最終巻は「現実と夢」の方がよかったんじゃないかなという気もしました。その方が、10年経って現実が夢の位置に来た、という事実がよりぐぐっと迫ってくるのでは、と)

 19~20巻、亜豆ミホ(このヒロインのキャラクターは王道だと思います)の菜保役獲得への戦いには、素直に感動しました。
 
 さて、全体の感想を述べると。
 普通はこういう内容なら実名を使わず、「あくまでもフィクションである」ことを強調するためにちょっと違った架空の名前の架空の雑誌(「少年チャンプ」とか...あ、「チャンピオン」みたいだな...)を舞台にして話を進めると思うんですが。
 堂々と集英社「少年ジャンプ」編集部を舞台に話が展開され、いくつかの作品は実名でも出てましたね。
 それは画期的なことだったんじゃないでしょうか。

 14歳の少年2人が、「2人で1人」の漫画家への夢を目指し、その道を驀進していく10年間の軌跡。
 昭和中期が舞台の、かの「トキワ荘」での青春を描いた名作「まんが道」(藤子不二雄A著、中央公論社)を、私なんかは思い出してしまうんですが。
 でも読んだ印象はまったく違いますね。
 一番違うのは、登場人物の「熱さ」の質感でしょうか。
 赤い炎と青白い炎の違い、というか。
 満賀と才野の2人にあった不器用さ、泥くささが、サイコーとシュージンの2人にはない。
 2人とも決して冷めた性格ではなく、むしろ純粋さと熱さをしっかり持ったキャラクターなんですが。
 あふれる才能と器用さが、いまどきの若者らしいスマートさを感じさせるのでしょうか?
 葛藤、怒り、そんな姿をむき出しにしていても、なんというかスタイリッシュに見えます。
(マイナスの意味でいっているわけではないです)
 そしてそれは、主役の2人だけではありません。
 天才・新妻エイジも。
 熱血・福田組組長、福田さんも。
 みんな目に心地よいカッコよさを持っていて、おかげでどんどんスイスイ、絵に誘われるように読み進んでしまいます。
 実にさまざまなテーマを提示しながら、最後にはもっとも大きな危機、この物語の骨格であるサイコーとミホちゃんの純愛にかかわる危機が訪れ、それを自分たちの純粋さを率直に貫くことで結果的に解決に導く。
 素直な感動を呼ぶ、いい作品だったと思います。
                       
 ただ。
 19~20巻の頃には、かかわる人々がみんなだ~っと後ろへ引いてしまって、点景のように終わっていったのがちょっと物足りなかったですね。
 (白鳥シュンは? 七峰透はどこへ行ったんだ?とずっと思ってました。岩瀬愛子も陰をひそめちゃったけど。静河くんの変化は、ある意味ハッピーエンドなんでしょうね? 平丸さんと蒼樹さんは、も~ちょっとあとを追ってほしかったかな...平丸さん、あんなに「癒やし系」になっていくとは...)

 各話の間のページで、原作の大場つぐみさんのネームが紹介されてるのが実に興味深かったです(全ページのネームを読みたいくらい)。
 なんだか別の作品みたいですね。
 このネームだと、話がすごくシンプルに分かりやすいんですね~。
 その時その時のキャラの感情とか。
 全然違う味わいで、これはこれで面白いんだけど。
 小畑さんのシャープな絵が。
 それに微妙な感情をプラスし、繊細な情感を加え、意味を持たせていく。
           
 小畑さんの絵はキレイなだけじゃなく、ふくらみと奥行きと、フワッとした情感もその中に含んでいると思います。
 漫画の絵って、単なる状況説明ではないんですね。
 「表現」なんですよね。
 (それについては「ぱんちらファイト」のエピソードでも触れられてましたが)  だから、漫画という芸術分野は凄いんです。
 
 話をキャラクターの方に戻すと。
 主要キャラは皆「愛すべき」度が高いですね。
 シュージンなんかは、普通(?)はもっと知性をハナにかけたクールすぎるヤなヤツっぽいとこもあって、そこでサイコーとぶつかり合ったりとかしそうなもんですが、そうはしない。ほんっと、ハラの底からいいヤツなんですよね。
 で、互いに本気で尊敬し、信頼し合っている。コンビとしては最強。
 「まんが道」の満賀・才野とは世代が3つぐらい違う、もちろん時代も違うってだけじゃなく漫画家としての質的にやっぱり異なる存在なんだな、と思ったんですが。
 ほんでも、すがすがしいまでの仲良しぶりは共通しているような気がする。
 藤子不二雄のお二人は、トキワ荘に下宿する前は親戚宅で、2畳(!)の部屋に2人で下宿してたんですよね~。プライバシーも何もあったもんじゃないですね。
 あっ話がそれた。
 ライバル・天才新妻エイジも。
 位置的に、憎まれポイントがもっとあってもよさそうなもんなのに。
 めちゃめちゃいいヤツじゃないですか!
 なんでも見透かしてるトコとか、めっちゃカッコいいし。 
 (佐々木編集長の移動で、珍しくもきちんと座ってお礼を述べる場面はなんだかグッときました)
 本当に、「亜城木夢叶」とは互いを尊敬しながら高め合っていける、理想的なライバル関係といっていいでしょう。
 逆にいうと読者にとっては、この2者の戦いにはそんなに気持ちを盛り上げられない気がする。どちらが勝っててもおかしくない、というか。
 なんとか「亜城木夢叶」が新妻エイジに勝ってほしい、と手に汗握る、というところは私にはあんまりなかったですね。
 それよりも、現実社会の中で状況を見定めながら、自分達の信じる創作のあり方を貫こうとするサイコーとシュージンの戦いの方が読みごたえがあったです。
 
 「アンケート至上主義」というのが少年ジャンプの編集方針であるとは聞いたことがありますが、これを読むとほんっとにそうなんだな、と感心してしまいます。
 それは、私が考える本来の「創作」のあり方とは対極にあるかたちなのですが。
 その方式の中で、毎週という短期的なサイクルで熾烈な戦いを繰り広げる状況をつぶさに読んでいくと(どこまで現実が反映されているのかはわかりませんが)。
 いままさに「最前線で時代と戦っている」人達のみの持つ気迫とプライドが。
 読み手にひしひしとと迫ってくるようです。 
 それは「いま」という時代にとって、絶対に必要な存在なんだという気がしました。
 往年の超人気番組をプロデューサーの目で回顧した「ザ・ベストテン」(山田修爾著、新潮文庫)を読みましたが、その読後感に通じるものがあります。
 時代の最先端で、文化を生み出す。
 その場の真ん中にいる、という高揚感。
 いつの時代でも、その存在は必要です。
 その「場」の在りかは、時代によって変わっていくものですが。

 ところで。
 話は全然違いますが、ひとつ思ったコト。

 新妻エイジが、「男と男の勝負です! 男の勝負がわからない人はつまらないです」と不敵な笑みを残して去っていく場面。
 そこで解説はいらないんじゃないの~? サイコー!!
 「男と男の勝負」に、一体なんの解説がいるねん!!
 カヤちゃんが分からなくっても、それはこの際いいって~!!
 ま~でも、そこで生真面目に、率直に解説してしまうのがこの世代の素朴な若者なのでしょうか。

 1巻から20巻までを通じて、いろんな場面で思ったことを書いていくとちょっとやそっとじゃ終わらないので、また回をあらためて書きます。

 キャラクターブックも出てる...。
 「ラッコ11号」が読んでみたいから、ちょっとほしいな...。
 「正義の三肩」も、ホントにあったら読みたい...。

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プロフィール

サト 日高新報記者。文化関係等の取材、編集整理、連載随筆や投稿原稿の編集を担当。空いた時間が少しでもあれば、本か漫画を読まずにはいられない。料理や洗濯をしながらも、可能な限り本を手離せない真性活字中毒。常に面白い本の情報を求めています。音楽や映画、歌舞伎など舞台芸術も大好きです。ひのえうま生まれの女。

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