出版した書籍を手に野㞍さん

 県保健医療行政のトップとして3年余りにわたり新型コロナウイルスと戦ってきた元県福祉保健部技監の野㞍孝子さん(68)=御坊市湯川町財部=が、日々の感染症対応の記録やその時の思い、苦悩などをエッセイ風につづった「〝和歌山方式〟を生んだ新型コロナとの連戦に思う~3年間の苦悩と葛藤の日々の軌跡~」を自費出版した。

 野㞍さんは県立医科大学医学部卒業、小児科臨床医を経て1991年から御坊保健所で勤務し、94年から所長に就任。2013年から県福祉保健部健康局長、18年から県福祉保健部技監となり、今年3月に退職。現在は東京医療保健大学学事顧問・特任教授などで活躍中。

 コロナ対応では2020年2月13日、県内で全国初のコロナ院内感染発生という衝撃的な状況の中、未知のウイルスとの戦いに頭を悩ませながら対策に奔走。感染者からのデータをまとめ、公表のため連日のように記者会見を行い、自身の人脈を生かして感染者の入院や救急調整も自ら電話をかけて対応。感染者の全員入院や徹底した感染把握、保健所ネットワークで感染を封じ込める和歌山方式も生み出した。

 人知れず悔し泣きしたり、県庁仲間と笑って疲れを吹き飛ばしあったりしながらも「前向き」をモットーに前進。県内でコロナ感染が発生した時から毎日のように日々の出来事を記録しており、和歌山方式確立の裏話や時系列のやり取りなどもまとめて、書籍にした。

 野㞍さんは「その時にしか書けない思いをつづった言葉の数々です。県庁退職にあたり、コロナと向き合った心の記憶を自分だけのものとせずに、後輩などにも伝えたいと思います。多くの人の支えに対する感謝も文字にしています」と話している。

 書籍の制作、販売は株式会社ぎょうせい。価格は2200円(税込み)。インターネット販売のほか、今月中旬から近くの書店で取り寄せ可能。