中国政府が日本を含む78カ国を対象に、コロナ禍で制限していた団体旅行を解禁した。宿泊やレジャー、飲食などの需要回復が期待されるが、コロナ禍で進んだ人手不足の回復が追いつかず、交通渋滞等の観光公害(オーバーツーリズム)を懸念する声も聞かれる。

 外国人といえば、技能実習生として来日した人の失踪の多さが問題となっている。技能実習制度では30万人以上の外国人が働いており、今年4月現在、約1万2000人の所在が不明で、実習先の職場を離れ、不法就労しているケースが多いとみられている。

 理由は低い賃金が第一で、転職が認められない制度上の規制も大きい。賃金については想定していた給与額と実際の手取り額に開きがあり、円安による母国通貨での仕送り額が目減りし、送金を控える実習生も少なくないという。

 また、日本語によるコミュニケーションの難しさがパワハラや搾取を生み、転職が認められないため、社会保障上のリスクを承知で不法就労に走る人が増えている。途上国への技能移転による国際貢献とは名ばかりで、安い労働力の確保が本音の制度は日本のイメージを傷つけ、結果的に他国に人材が流れてしまっている。

 観光で日本を訪れる人も、仕事を得て日本へ移り住む人も、日本の文化、国民の礼儀正しさ、治安のよさ、街の美しさに惹かれてやってきたという人が多い。これらはまぎれもない事実であり、日本人としては素直にうれしい。

 その一方で、技能実習生が日本社会の裏の現実に直面して不法就労せざるを得ず、日本人同士のネット上の誹謗中傷、いじめ、それを苦にした自殺もあとを絶たない。無理に安い外国人労働力を求めず、政府はしっかり自国民の所得向上を。(静)