人口の減少はどこの自治体でも抱えている悩み。祭りなど伝統文化の継承が困難になるほか、税収の低下、企業の労働力不足など深刻な問題につながる。しかし、若者の未婚化や晩婚化が進む中、出生率をアップさせ、自然増によって人口を増やすのは至難の技。できる対策としては他の自治体から移住者として招き入れることぐらいしかないのかもしれない。だが、それもそう簡単ではない。

 ところが、山口県の周防大島(すおうおおしま)町に都会の富裕層が相次いで移住しているという。同県南東部、瀬戸内海上の屋代島(周防大島)に位置し、特産品はミカン。平均気温が15度と比較的温暖な気候と豊かな自然が魅力。きれいな海や歴史的にハワイと結びつきが強いことから「瀬戸内海のハワイ」とも言われる。

 町は移住政策に力を入れ、2~4週間のお試し生活などを実施。2021年度までの5年間で2256件の移住相談が寄せられ、少なくとも65世帯123人が移り住んだという。22年度の町民税収は当初予算で想定した4・8億円から7倍の32・2億円になった。コロナでテレワークが普及し、地方にいながらでも仕事できることが移住者増の要因でもあるのだろう。先日、日本テレビの番組「マツコ会議」でも紹介された。

 日高地方に目を向けると、由良町には日本のエーゲ海と呼ばれる白崎海岸があるし、美浜町にはアメリカ村もある。太平洋に面したきれいな海や清流の日高川、自然豊かな森林などがあり、ミカン栽培も盛んで、周防大島町と類似点が多いことに気づく。アピール次第で移住者を獲得するチャンスが広がるのではないか。(雄)