梅雨は「梅が実る頃の雨」という意味。6月のテーマは「梅干し」とします。

 「檀流クッキング」(檀一雄著、中公文庫)

 「火宅の人」「リツ子・その愛」「リツ子・その死」などの著書があり、女優檀ふみの父でもある昭和の文豪、檀一雄。食通としても知られ、食文化関係の著書も数多くあります。

 本書では、著者の「食」へのこだわりが四季ごとに述べられます。

   * * *

 忙しいご婦人方にも、断乎として、梅干を漬けなさいと申し上げる。(略)神々しい、神がかりでなくっちゃとてもできっこない、というようなことを勿体ぶって申し述べる先生方のいうことを、一切聞くな。檀のいうことを聞け。(略)ガラス瓶を一つきばって、そこの中に漬け込み、床の間に置き、その出来上がりの梅干だの、ラッキョウだのを、毎日チラチラと生花のつもりで眺めてみるのは、愉快なことではないか。(略)よくアクを抜き取ったシソの葉を、梅の塩漬けの液の中に加えると、忽ち美しいアカネ色の梅酢の発色を見るだろう。この梅酢をつくるだけでも、梅干を漬けることの仕合わせは感じられる。(略)快晴の日にこれを三日ばかり繰り返すと、梅の実の皮も、肉果もやわらかく、しみじみとした梅干が出来上がるのである。

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