ふっと思い立ったように旅行に行きたくなる時があるのですが、そういう時はここといった目的地も決めず、電車を乗り継ぎながらゆる~く旅をすると決めています。こちらの主人公のお姉さんも電車でフラリと旅に出て、行く先々で気の赴くままに過ごすのがお好き。いわゆる無計画派のひとり旅が好きな人は、きっと共感できる内容の漫画です。2017年に第1巻が発刊され、今回紹介するのは最新の第6巻。

 この巻では、お姉さんがきのくに線を南下して御坊方面を訪れる場面が登場します。もちろん御坊へ来たからには外せない紀州鉄道にも乗車。西御坊駅で下車し、帰りの電車の時間を気にしながら旧市街地を散策していくのですが、お姉さんは「切り上げようとするとまるで誘うように気になるものが現れる」と、歩くほどについ興味を引かれていく様子。「興味が持続するのはいい街の証だ」と表し、時が過ぎゆくままに御坊の町並みを楽しんでくれました。当たり前に見ている光景も、作品を通して魅力的に伝えてくれるのは、新たな発見があり非常に面白いものがあります。

 ひとり旅を何回か経験すると、荷物を極力少なくしたいと思うのが性。鉄道ひとり旅を極めたお姉さんも限界まで荷物を減らして旅に出ようとしますが、電車移動中に読む本が欲しいなとか、いつも使っているタオルが良いな、突然雨が降って来るかもしれないから折りたたみ傘も必要かな…と、あれやこれやと考えていればキリがありません。こういう準備から楽しむのもこれまた旅行の醍醐味です。

 お姉さんは作中では名前も年齢も職業も明かされていません。知識の深さにところどころ醸し出される旅行上級者感が否めないですが、謎めいた感じとささいなことでも楽しめる等身大な感受性がダイレクトに伝わり、ふらっと旅に出てみたいな~と思わせてくれる作品です。(鞘)

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