最後の力で仕上げた 「鶴の千羽織」 を与ひょうに渡すつう

 日高地方で活動する劇団RAKUYU(松本こうじ代表)の第14回公演「朗読新世界」が4日、御坊市民文化会館小ホールで上演された。

 コロナ禍もあり、単独の公演としては2018年の「ブンナよ木からおりてこい」以来5年ぶり。新たな試みとして、朗読だけで表現する山本周五郎原作「ひとごろし」、朗読と芝居を組み合わせた木下順二原作「夕鶴」を披露した。「ひとごろし」は、臆病な武士が自分なりの方法で上意討ちに挑む物語。相手と出会うと「ひとごろし」と叫んで逃げ出すというやり方で、結果的に相手を追いつめる。

 「夕鶴」は民話「鶴の恩返し」を題材とした有名な作品。鶴の化身のつうは自分を助けてくれた純朴な若者与ひょうの女房になり穏やかに暮らしていたが、自分の羽を織り込んだ「鶴の千羽織り」が都で高く売れることから、周囲の人々の欲望に幸せを壊されていく。人間の物欲が理解できず、「あんたがだんだん遠くなる」と愛する与ひょうの変貌を悲しむつうの姿に、観客は心動かされた様子で見守った。公募で出演した3歳から小学生までの子どもたちも、「かごめかごめ」を歌ったりつうと一緒に遊んだりと熱演していた。

 終演後に出演者全員が登場し、つうを演じた木本真希さんが「ようやく集まってお芝居が楽しめるようになりました。見てくださってありがとうございます」とあいさつ。温かい拍手が送られた。

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