醸造したビールを瓶詰めする渋谷さん

 日本人として初めて本格的なビール醸造を手掛けた大阪の故渋谷庄三郎さんの夢を継ぎ、藤井寺市に2021年からクラフトビール醸造・直売所「大阪渋谷麦酒」を開業した渋谷香名さん(51)=大阪市北区在住=が、キッチンカーを導入して和歌山県でも事業を展開する。次女の茉央さん(23)が御坊市地域おこし協力隊員を務めている縁で、18日に野口で開催されるキャンピングカーイベントで〝初遠征〟を予定している。

 庄三郎さんは天満で綿問屋や清酒醸造を営む4代目で、1872年(明治5)にビール醸造所を設けてビールの製造、販売を開始。「渋谷ビール」と呼ばれたが、当時はビール特有の苦みが受け入れられず、9年後に庄三郎さんが亡くなると、醸造所も閉鎖された。

 9代目に当たる寝具店を営む尚彦さん(55)が、渋谷さんの夫というつながり。香名さんは24歳で結婚して、祖先がビール醸造をしていたことを知り、地域の盛り上げにも一役買おうと、実家のパン屋跡を改装してクラフトビールの醸造を決意。大阪のビール会社に頼み込んで工程を学び、醸造免許も取得して開業にこぎつけ、現在は「河内乃えーる」の銘柄で香りやコクなど個性豊かな5種類を販売、こだわりのチキンサンドも開発した。

 母親が新宮市出身という縁もあり、先月、キッチンカーを購入して、和歌山での露店営業許可も取得。18日には御坊市野口オートキャンプ場で、フェイスブックキャンピングカー倶楽部(CCC)関西が主催するオフ会に出店。午前11時から、一般も来場OK。自身ビール党の渋谷さんは「クラフトビールは季節のフルーツなどを使って無限に味を変えられます。苦手な人もお気に入りの一杯を見つけることができるはず。ご依頼があればどこのイベントにも行かせていただきます」とPR。将来的には渋谷ビールの復活も目指しているという。

 店のロゴ作成などに協力している茉央さんは「私を含め和歌山で受け入れてくださることに感謝。ビールで地域が盛り上がる機会になれば」と、母娘そろってビールで和歌山に元気を注ぐ。