毎年夏休みに倉敷市で開催される大山名人杯争奪全国小学生倉敷王将戦の県大会が先日、御坊市湯川町の財部会館で開かれた。昨年、小学低学年(1~3年生)の部で準優勝だった塩屋小学校2年の小竹和寿(しの・かずひさ)君が初優勝。前回の悔しさを晴らし、全国大会への出場を決めた。

 幼稚園の年中の時、父親から将棋を教えてもらったという。その後、御坊市や田辺市にある将棋教室に通っているほか、オンラインゲームでも対局し、めきめきと棋力を付けた。実力はアマチュア1級程度。

 取材で決勝の様子を見学させてもらった。対局相手は和歌山市の小学1年年の男の子。両者息詰まる熱戦となったが、小竹君が中盤で優位に立って勝ち切った。印象に残ったのは対局後。勝ちを決める最後の手を小竹君が差すと、対戦相手の男の子が将棋盤に手を置いて頭を下げた。「負けました」という意味である。男の子はその後、付き添いの母親の下に歩み寄り、悔し涙を流していた光景に心が打たれた。

 どんなに無念極まりなくても、対局相手に敬意を表すのが将棋の世界。昨年、準優勝で一歩力及ばず涙をのんだ小竹君もこの男の子と同じ気持ちだったのかもしれない。しかし、負けを認めた上で、悔しさをバネに頑張ったからこそ今回の優勝につながったといえる。

 スポーツの世界でも人生でも同じ。自分の負けや失敗を受け入れてこそ、次へのエネルギーに変わる。負けや失敗の悔しさを知ってこそ強さが生まれる。敗者と勝者、失敗と成功は常に背中合わせで、そう遠くかけ離れた存在ではないのかもしれない。(雄)

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