広島サミットも無事閉幕、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインでなく対面参加し、大きな話題となりました。世界の「今」を読み解くためにも必要な戦後史の概略を、著者ならではのやさしい語り口で分かりやすく解説した一冊をご紹介します。

 内容 全18章で、湾岸戦争、東西冷戦の始まりと終焉、朝鮮戦争、ベトナム戦争、スターリン時代のソ連、ポル・ポト時代のカンボジア、文化大革命時代の中国等について解説。

 1990年8月2日、イラク軍の大戦車部隊が国境を越え、クウェートに侵攻した。クウェートは人口180万人の小国だが、石油資源に恵まれた豊かな国。イラクはあっという間に全域を占拠し、「クウェートはイラクの一部になった」と発表。「隣国に軍隊で侵攻し、自分のものにする」という野蛮な行為が現代に堂々と行われたことに世界は衝撃を受ける。国連はただちに非難決議をまとめ、多国籍軍を結成。1991年1月17日未明からイラクへの攻撃が始まり、アメリカ軍の総力を挙げての攻撃で、イラク軍兵士は次々に降伏。開始からわずか100時間で終結し、イラク軍はクウェートから無条件で撤退した。(第1章「冷戦が終わって起きた湾岸戦争」)

 かつてソ連には「スターリン時代」という暗黒の時代があった。1924年、レーニンの後を継いでスターリンがトップに立ったことでソ連は空前の災禍に見舞われる。粛清、処刑、餓死…正確な人数はいまだに判明しないほど膨大な数の人々が不慮の死を遂げることになった。さらに、農業集団化の失敗により農業基盤は崩壊。豊かだった穀倉地帯のウクライナでも飢饉が発生する。また、少数民族を弾圧。クリミア半島に住んでいたタタール人をウズベキスタンに移住させ、そのあとにロシア人が住み着いた。

 旧ソ連が崩壊し、ロシアは民主主義国家へ歩み始めたように見えたが、プーチン大統領による強権政治が続いている。スターリンの恐怖政治は、決して過去のものではない。(第4章「スターリン批判」)

 湾岸戦争が始まった時の衝撃はよく覚えています。京都で勤めていた時の職場で、出勤すると先輩が「戦争が始まったな」と言い、当時テレビをまったく見ず全国紙も購読していなかった私は「は? 何を言ってるんだろう」と、ひどく時代錯誤なことを言われた気がしました。

 それから30年以上も経って、またこんなに理不尽な戦争が起こっていることにはやるせないほどの怒りを禁じ得ませんが、世界の国々が事態の打開へ知恵をしぼっていることには希望を持ちたいと思います。本書や一連の現代史解説など、歴史を記した本の中に答えを導く鍵はあるかもしれません。
著者は最後にこう述べます。「歴史に学ばないものは、同じ過ちを繰り返すといいます。歴史を軽視すると、歴史に罰せられるのです」。(里)

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