2011年から明石市長を3期12年務めた泉房穂氏。職員や議員への暴言が度々問題となり、昨年4月に市長を退任、政治家を引退しました。

 市長在任中は子育て施策に尽力。医療費や給食費など「5つの無料化」の実施や、福祉事業にも力を入れ、人口、出生数、税収を伸ばし市民から絶大な支持を集めました。退任時には「辞めないで」と市民から直訴されたほど。

 この本は政治家引退直後に行われたインタビューを対談形式で収録。ⅤS議会、役所、政党、マスコミ…。政治家を引退したからこそ言える本音や裏話が満載の一冊です。

 泉氏は明石の貧しい漁村に生まれ、小卒で漁師になった父親、障害を持って生まれた弟の影響で「市長になって冷たいこの町を優しい町に変える」という目標を10歳で掲げます。そこから東大進学、テレビ局ディレクター、弁護士資格取得、衆議院議員という輝かしい経歴を積んでいきます。そこには10歳の頃の目標を実現してやるという強い思いがありました。

 市長選に立候補した当時、相手候補は盤石の支持基盤を持っていましたが、泉氏は市民の後押しで相手候補を69票差で破って当選。そして、役所・議会がアウェーな中、市長として一人乗り込むことになるわけですが、驚いたのは一年目から職員に発言を録音されていたこと。泉氏はそれでも「政治は結果がすべて」とし、利権が絡んでいようが市民のため、荒っぽいやり方でも職員や業者を動かすことが大切だと話しています。市長の12年間、その軸がぶれなかったからこそ、市民から絶大な支持を得たのだと納得しました。

 そんな泉氏の好きな言葉は「四面楚歌」。敵に囲まれていても、空と地下が残っているじゃないかと力が湧いてくるそうです。 

 本は終始一貫した主張で、するする読めます。まだ60歳。これからは国を立て直して欲しいと、多くの読者が感じたことでしょう。(鞘)

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