短歌と随筆集を手に片山さん 

 鳴滝歌会、日高ペンの会会員の片山清子さん(78)=日高川町船津=は、NHK学園から短歌と随筆集「雨栗日柿(あまぐりひがき)」を発刊した。

 片山さんは看護師として勤める傍ら、50歳ごろから地元の中津村(現日高川町中津地区)で活動している鳴滝歌会に入会して短歌を始めた。地方紙に毎月、詠草が掲載されると、知人らから寄せられる感想が励みになったという。退職後は近隣の高齢者施設で介護の仕事、夫とともに農作業を続けながら、日高短歌会、全国短歌結社の「コスモス」にも入会。随筆は2013年から、日高ペンの会発行の随筆誌「日高野」に投稿を続けている。

 短歌を始めて30年近く経つことから歌集として形にすることを考えたが、なかなか作業が進まない中、昨年5月に大病を発症。あらためて「短歌と人生の集大成を」と一冊の本を出す決意を固めた。幸い手術後の経過はよく、気持ちと時間にも余裕が生まれ、今回、短歌350首、随筆17編を収めた一冊を完成させることができた。挿絵は義理の妹の由良裕子さんが担当し、コスモスの花の絵などを添えている。

 数多い短歌作品から、「コスモス」所属の木畑紀子さんが350首を選び、帯に「自然の豊かさ、尊さ、人への思いやりに満ちた歌群は、私たちが忘れかけている大切なものを呼び戻してくれる」との言葉を寄せている。表題は「昔から『雨栗日柿』と言ひにけり日照りの今年柿は豊作」との歌から木畑さんが「雨の多い年、日照りの多い年、それぞれに実りがある深い意味の言葉」とつけた。

 「五歳なる孫の便りを夫と読むクイズの如く知恵はたらかせ」「精霊を三組の夫婦と孫二人犬一匹とそろひて迎ふ」など家族を詠んだ歌、「三十俵の収穫ありて秋深しビールで夫と祝杯あげる」「わが村を眼下に眺め捥ぎたてのみかん食べるは農のたまもの」など夫との農作業を詠んだ歌などが収められ、自身でお気に入りの歌は、好きなマリーゴールドを詠んだ「しあはせになれる気がする万寿菊三十本を門先に植う」。

 片山さんは「これまでの人生を形にでき、うれしく思います。短歌や随筆は生きがいです。できれば次の歌集を目標に頑張りたいと思っています」と話している。
 本書は御坊市立図書館、日高川交流センター、近隣の公民館図書室などに寄贈予定。