波板を設置して応急措置した大賀池

 美浜町三尾にある大賀池が、数年前から老朽化による漏水が問題となっており、関係者が頭を抱えている。管理している和歌山大賀ハス保存会の阪本尚生会長(68)によると、今年は特に漏水がひどく、4月には一度、池の水がほとんどなくなってしまったという。応急措置でなんとか水量を保っているが、今後も池を守っていくためには抜本的な対策が必要で、「皆さんの知恵を貸してほしい」と協力を求めている。

 大賀ハスは1951年、千葉市の遺跡で発掘された2000年以上昔の古代のハスの実を、ハスの権威だった大賀一郎博士が発芽、開花に成功したロマンあふれるハス。大賀博士と師弟関係で日高高校教諭だった故阪本祐二氏の仲介で、美浜町には62年に分根され、以来62年にわたり、和歌山大賀ハス保存会が大切に保存している。

 元京都府立植物園長で京都花蓮研究会長の金子明雄さんによると、大賀ハスは全国に分根されているが、時間の経過とともに他のハスと交雑するものが多くなる中、分根した当時の原種を保っているのは大賀池や本場の千葉県など全国でわずか5カ所しかないという。大賀池の大賀ハスは非常に貴重だが、今、池存続の危機に直面している。

 今年4月、保存会が大賀池の除草作業を行ったところ、漏水による水位低下の影響で、湿地を好むキシュウスズメヒエなどの雑草が池の半分を覆う勢いで茂っていた。漏水は池の南東側で起こっており、波板を設置するなどし、5月の連休明けにはようやく水位が安定したが、あくまで不安定な応急措置でいつ漏水が起こるか分からない状態。このままなら今年は開花が期待できるが、池の存続には改修が必要という。

 阪本会長によると、これまでにも2回、危機があった。1回目は2015年、土壌の酸性化でハスが枯れた。土を入れ替えて改善した。2回目は5年ほど前、イノシシがレンコンを掘って食べる被害が発生。大賀池の東側にあった小さい池のハスが全滅したが、檻を設置して捕獲し、幸い大賀池への被害は免れた。今回の漏水は第三の危機という。

 保存会のメンバーも高齢化しており、維持管理が年々大変になる中、池の改修となると高額な費用が必要で保存会単独では難しいのが現状。阪本会長は「多くの人に見てもらいやすい場所に分根するとしても、この歴史ある大賀池はなんとか守っていきたい。どのような方法があるか、多くの人の知恵を借りて探っていきたいので、ご協力お願いします」と話している。