知事選挙がにわかに熱くなってきた。今年5月に立候補を表明した岸本周平氏は7月にそれまで所属していた国民民主党を離党、自民党県連に推薦依頼を出したうえで、今月1日付で衆議院議員を辞職し、退路を断って選挙に臨む姿勢を示した。ところが、そのわずか2日後、県連は総務省官僚の小谷知也氏の推薦を決定。県連は一致団結しての支援を強調するが、岸本氏を推していた役員からは不満が出ており、今後、県連に不協和音が生じたまま激しい戦いに突入する可能性もある。

 衆院和歌山1区選出だった岸本氏は出馬表明後、これまで活動できていなかった2区、3区で市町村長や企業代表らへのあいさつ回りを行って先行しているが、保守王国和歌山で大きな後ろ盾となる自民党の推薦が受けられないのは大きな痛手。1区では絶大な人気を誇るが、県全体での戦いとなるとどうか。一方、小谷氏も自民党の推薦を受けられ、仁坂吉伸知事も支援すると言っているが、大船に乗った気持ちではいられない。県内での知名度はほぼゼロと言ってもよく、これから告示までわずか2カ月の間にどこまで挽回できるのかがカギとなる。

 官製談合事件で任期途中に引退した木村良樹前知事の後を継ぎ、4期にわたり続いた仁坂県政も残り3カ月余り。ここ3年間はコロナ禍で県内経済は大きく沈んだが、今後はいよいよアフターコロナ、ウィズコロナへさまざまな施策を本格化していかなければならない。県勢浮揚に向けたこの重要なタイミングに、和歌山のかじ取り役をまかせられるのはだれか。有権者には各候補者の公約や決意、情熱などをしっかり見極め、未来への一票を投じていただきたい。 (吉)