各地で開かれている高齢者のデイケアサロン、老人会の健康体操教室などを取材する機会が続いた。サロンは一時コロナ禍で休みが続いていたが、手指消毒、マスク着用などの条件のもとでぼつぼつ再開されている◆対象はおおむね60歳以上だが、80代、90代、100歳の方も元気に参加されている。体に適度に負荷をかけることは、筋肉にも精神衛生上もいいようだ。みんなでゲームに熱中したり、うたいながら体操しているのを見ると、マスクの下の笑顔が感じられた◆87歳の母が腰椎圧迫骨折と膝の骨挫傷で、2月初めから5月下旬まで4カ月近く入院した。熱心なリハビリなど大変お世話になったのだが、元々脳梗塞の後遺症で左手足が動かないこともあり、退院後まったく歩けなくなってしまった。それまでは少しなら右手で杖をついて歩けたのだが、歩くどころか自力で腰かけていることもできない。何から何まで介助が必要になったが、困ったことに足腰などにちょっと触ると「痛い」と連発される。どうすれば痛くないのか、途方に暮れる毎日だった◆ところが退院から4カ月、デイサービスの利用や訪問リハビリを受け続けるうち目に見えて体に力がついてきた。重力によってベッドに縛り付けられているようだったのに、腰かける動作に近い姿勢を保てるようになった。そうなると「痛い」という回数がぐっと減った。わずかでも筋肉がつけばクッションになるようだ。適切な運動で筋肉が戻る。理屈は分かっていたが、実際に過程を目で確認すると感動すら覚える◆人生の先達たちが生き生き活動できるのは「安心、安全な社会」の必須条件。あとへ続けるよう、自分も座りっぱなしの生活を改善しなければと思った。(里)