シカなど野生動物による食害で生産量が減少している日高町原谷の黒竹を復活させようと、地元で100年以上続く竹材店のオーナー金﨑昭仁さん(61)と弘昭さん(32)の親子が昨年夏に植えた苗から、若芽が出始めた。順調に育っており、4、5年先には竹林に育つという。金﨑さんは「今後も面積を増やし、産業の活性化につなげていきたい」と再生への手ごたえを感じている。

 黒竹は中国原産の淡竹(はちく)の一種で、青竹と比べて幹が細く、外皮が黒いのが特徴。高温であぶると独特のつやが出る。落ち着きのある色合いで、主に庭の竹垣、家屋の内装などの建築材として使用されているほか、民芸品としても利用される。出荷は伐採して乾燥させたあと、火であぶってまっすぐに伸ばし、太さによって数本から数百本を束ねて出す。高知県にも産地はあるが、日高町が日本一の規模を誇る。

 原谷地区の竹林は約60㌶。30年ほど前は黒竹が生い茂っていたが、シカなどによる食害や竹を枯死させるテングス病により生産量は以前の3分の1から5分の1程度にまで減少したという。

 金﨑さん親子は黒竹を再生させようと、昨年7月、御坊日高博覧会「おんぱく」のプログラムの1つとして借地の休耕田に約100本の苗を植栽。周囲には高さ約2㍍の金網を設置し、シカなど鳥獣対策も施した。

 苗はほとんどが枯れずに定着し、4月末ごろからは竹の根元から若芽が出始めている。長いものは1㍍以上になっている。

 金﨑さんは「平坦な休耕田などを利用することで、山の傾斜地と比べて作業もしやすいというメリットもあり、作業の効率化にもつながる。今後は植栽面積を増やし、黒竹が生い茂る竹林にしていきたい。黒竹産業の材料を確保し、地域の活性化につながれば」と話している。

写真=植栽した黒竹から若芽