御坊市は30日、市役所で認知症の人とともに築く総活躍のまちシンポジウムを開き、第1部で若年性アルツハイマー型認知症の当事者が講演。第2部のパネルディスカッションでも、軽度認知障害と診断を受けた人らも交え、周りの環境がよければ楽しく前向きに生きられると、本人視点から認知症の人ともに築くまちづくりへメッセージが送られた。

 ごぼう総活躍のまちづくりプロジェクトの一環。認知症当事者や地域住民、介護サービス事業所の関係者ら約100人が参加した。

 第1部では丹野智文さん(45)=宮城県=が講演。丹野さんは自動車販売会社の営業マンとして働いていた39歳のとき、若年性アルツハイマー型認知症と診断され、苦悩しながらも周りの理解や支えで、楽しい人生を再構築しているというエピソードを披露した。

 認知症本人の視点から「認知症になっても周りの環境さえよければ笑顔で楽しく過ごせる」と人と人のつながりが当事者を笑顔にすると強調。認知症の家族や支援する人に「認知症は守られる存在ではありません。ただの病気。みんなで支え合える環境をつくり、私も同じように支えになりたい」と訴えた。

 認知症介護研究・研修東京センター研究部長の永田久美子さんが講演したあと、丹野さんと永田さんも交えて、ボート競技元オリンピック選手で軽度認知障害の柿下秋男さん(66)=東京都=、認知症の人も安心して利用できる銭湯を目指している野天風呂宝の湯の大川寿樹さん、市在宅介護支援センター藤田の玉置哲也さんをパネラーに、パネルディスディスカッションを開催。柿下さんは2014年ごろ診断され、地域の「みんなの談議所しながわ」で仲間たちとの活動にチャレンジしている毎日を紹介した。

 ソフトボール大会に出場するなかで、「喜びは認知症になっても変わらないし、プラスの経験を多くの人で共有すると、心に留まるし自信になる」。「体を動かす、みんなでやる。褒められるとうれしく、これらの積み重ねがうつの部分を前向きに変える」と力を込め、永田さんは「本人や周りの人らみんなが温かくなる集まりがあれば、絶望ではなく希望の〝良循環〟が生まれる」とメッセージを送った。

写真=認知症当事者らを交えてパネルディスカッション