ことしの第2回市民教養講座講師は、当初の予定だった道上洋三氏に代わり、フリーキャスターで事業創造大学院大学客員教授の伊藤聡子さん。テーマは地域経済の活性化。中身が濃く、面白い講演だった◆中身が濃い、と感じたのは、挙げられる事例が豊富で多彩なこと。高齢者のニーズに応え業績がV字回復したバス会社、子どもたちのアイデアを取り入れ大ヒット商品を生んだ食品会社、病院のベッドに見守り機能をつけ看護師の負担を軽減した介護関連の企業等々、すべて地方の中小企業の成功事例だ◆その前に、日本が直面する課題が示された。人口と機能の首都一極集中、異常気象、高齢者の急増と生産年齢人口の減少…どれも簡単に解決のつかない問題だが、「課題=チャンス」だと伊藤さんは言う。「切迫した状況で追い詰められている『地方』からこそ変革は起こる」と◆テレビでも有名な、チョーク生産のシェア日本一の日本理化学工業㈱は、社員の70%が知的障害者。工場を山口県か北海道美唄市か決める際、ほぼ山口に決まっていたのに「美唄の障害者に働く喜びを教えて下さい」という言葉に社長が心を動かされ、周囲の反対を押し切って美唄に決めた。するとその地で大量に廃棄されていたホタテの貝殻が、のちに同社の主力商品となる「ダストレスチョーク」の原料に最適と分かる。「鳥肌が立ちました」と伊藤さん。それを聞くこちらも鳥肌が立つような感動を覚えた◆事例はすべて、伊藤さん自身が現地で取材。関係者の生の声を聞いたからこそ、言葉から彼等の熱意が伝わる。「活性化の鍵は女性の活用」と最後に訴えていた。女性は共感力が高く、顧客に寄り添った視点でみられる。この講演そのものが「共感」の力を表すようにも思えた。(里)