北朝鮮の危機を抑えて、連日、トップニュースの大相撲の騒動。何がどうなっているのか、だれが何をしたいのかよく分からないが、この不気味さ、気持ちの悪さが独裁国家と通じるものがあり、格好のワイドショーネタとなってしまっている。
 そんな騒ぎよりも、相撲ファンが見たいのは土俵の上の真剣勝負。先の九州場所は白鵬、稀勢の里が復帰したが、中日まで盛り上がったのは5日目に松鳳山が稀勢の里を圧倒しながら敗れた一番ぐらい。その稀勢の里は9日目で5敗を喫し、休場した。
 新入幕から3場所連続二桁、一気に三役まで駆け上がった阿武咲は、上位相手に気合いが空回りしたか、2日目以降は6連敗。それでも気持ちを切らさず粘りをみせ、千秋楽で勝ち越し、平幕転落を免れた。
 若手のなかで気を吐いたのが前頭筆頭の貴景勝。まるまるとしたあんこ型ながら、のど輪に刺さる突きはさらに威力を増し、中日までに金星2個を含む6勝、上位総当たりの厳しい位置で白星を11勝を挙げ、初場所の三役昇進を確実にした。
 もう1人、印象に残ったのは幕内7場所目の北勝富士。二度目の白鵬戦は完全な力負けだったものの、まわしをつかんで土俵際の粘りをみせただけでも、他の力士よりは健闘した。自己最多の11勝も三役入りは持ち越しとなりそうだが、初場所は悔しさをバネにパワーアップを。
 日馬富士の不祥事も痛いが、角界にとって何よりも痛いのは力士のけが。照ノ富士、御嶽海、遠藤らが万全であればもっと盛り上がったはずで、アキレス腱断裂から奇跡の帰り入幕を果たした安美錦も本来の力は出し切れておらず、宇良も含めて彼らが復活せねば協会に未来はない。白鵬の余裕の独走が情けない。 (静)