バイク事故で下半身が不自由になった日高町志賀の古屋祥宏さん(46)が、障害を乗り越え自動車の運転免許を取得した。障害者の相談支援専門員の仕事に励む傍ら、車いすのまま乗り込める特注のワンボックスカーで夢だったドライブを楽しんでおり、公私ともに充実した毎日。「努力すれば夢はかなうことを多くの人に知ってもらいたい」と、力強いメッセージを送っている。
 古屋さんは田辺市出身。現在は御坊市湯川町小松原の障害者総合支援㈱松山で相談支援専門員として働いている。17歳のときにバイク事故で頚椎を損傷し、下半身が動かず、手の指も思うように動かせないなど重度の後遺症が残った。長い入院とリハビリ生活を経験した中で、車を運転したいという思いを強くしたのは、ある男性との出会いだった。その人も体に障害を抱えながら、車の運転免許を取得したことが刺激となり、二十歳のときに「自分も免許を取りたい」との思いを抱いた。受け入れてくれる教習所や車の問題などハードルは高く、一度は断念したが、思いは持ち続け、平成25年10月から再び行動に移した。
 当時、京都の障害者居宅介護事業所で働いていたことから、京都府公安委員会や自動車学校にかけ合い、特注の福祉車両を使って教習を受けることが可能になり、半年後の26年春、念願の免許取得を実現させた。愛車のワンボックスカーももちろん特注。後部に昇降リフトを備えつけており、電動車いすのまま乗り込んで運転席に固定。アクセルやハンドルは運転席左右に取り付けたレバーで操作できるようになっており、二十数年来の夢だったドライブを楽しんでいる。
 古屋さんは「たくさんの人の協力と支えで念願がかない、感謝の気持ちでいっぱいです。夢を持ち続け、実現に向かって努力すればかなうということが多くの人に伝わり、いろんなことにチャレンジするきっかけになればうれしい。障害があるから車の運転を諦めている人がいれば、少しでも力になりたい」と話している。