リオオリンピックが閉会。日本人選手のメダル獲得数は、これまで最高だった前回のロンドン大会の38個を上回る41個となった。そこには、勝っても負けても涙を流す選手たちの姿があった。メダルの色でも涙の意味が違う場合もある。「悔し涙」「うれし涙」という簡単な言葉では言い表すことができない、複雑な感情が胸にこみ上げてくるのだろう。
 筆者がこの大会で一番印象的に残ったのはレスリング53㌔に出場し、銀メダルだった吉田沙保里選手。決勝でアメリカのヘレン・マルーリスと対戦し、1ピリオドは1―0とリードを奪ったが、2ピリオドで逆転されて1―4で敗れた。敗戦が決まるとしばらくマットに顔をうずめ、泣き崩れた。
 オリンピックに出場することでさえスポーツ選手万人の夢。しかも、そのオリンピックで3連覇するという偉業を成し遂げ、今回でも世界で2位という立派な成績だった。にも関わらず、試合後のインタビューでは「ごめんなさい」という言葉を口にした。「霊長類最強の女子」とまで言われたレスラーが人目をはばからずに涙を流した。
 だが、今回が銀メダルだったからといって吉田選手の功績が決して色あせることはない。「勝って当然」という途方もない重圧を背負わされていたことは、他の選手にはなかった大きなプレッシャーだったのだろう。
 筆者はスポーツのことはまったく知らない素人で、もちろん日の丸を背負って戦った経験などない。そういう人間が言うべきことではないかもしれないが、ただ言えることは、メダルの色に関係なく選手達が国民に大きな感動を与えたという事実。吉田選手をはじめ、出場選手すべてが金メダル以上に輝いていた。(雄)