5、6月ごろになると由良町にある筆者の家の周辺にホタルが飛び始める。多いところでも5匹程度だが、毎年ホタルを見るたびに季節を感じることができる。記憶は定かでないが、昔より増えているような気がする。実際全国的にもホタルが増えてきているという報告もあり、下水整備による河川環境がひと昔前より良くなったことや、農薬の性質の変化などの影響があるのだろう。ホタルと言えば、数年前に広川町で見た無数に飛び交う様子が印象に残っている。
 そんなホタルだが、平成23年の紀伊半島大水害で壊滅状態となった日高川町の寒川地内では、復活へ向けた取り組みを始めている。寒川では最盛期には、いたるところで無数のホタルが飛んでいたとのこと。当時の様子を知っている人に聞くと「数千どころではなく数万、数十万」と数ははっきりしないが、とにかくすごかったということは伝わった。そのホタルも水害被害を受け、以降は数匹から数十匹程度になっているという。復活に向けては保存会と町の地域おこし協力隊が中心になり、飼育場整備やエサとなるカワニナ養殖を進め、去る11日には初めて幼虫の放流を行った。約100匹の幼虫で、寒川第一小学校の児童も協力した。
 放流の際、児童に話を聞いたが、寒川に住んでいながらたくさんのホタルを見たことがないというのが残念だった。数十万匹のホタルが飛び交う姿は感動的で、子どものころに見ても一生忘れることはないだろう。ホタルの復活は人を呼ぶ観光面だけでなく、子どもたちの郷土への誇りにもつながる。復活にはこれから長い年月がかかるだろうが、地道に続け、いつの日か無数の光が舞う様子を楽しみにしたい。(城)