全国的にさまざまな地域活性化の取り組みが行われているが、その中にそば栽培というのもある。そばは比較的手間がかからず栽培できるとされており、遊休農地の有効活用や名物開発につながるからだ。日高地方でもかねて観光関係者の中にはそば栽培を提案する人がいる。
 そんな中、日高町観光協会内徳報会の会員が、遊休農地でそば栽培をスタートさせる。同町が生誕の地である徳本上人の偉業顕彰と地域活性化の取り組み。全国的にみると日高町でのそば栽培は〝二番煎じ〟や〝三番煎じ〟どころではないが、同町は全国にないそばとのつながりがある。
 社会面でも紹介した通り、俳人小林一茶がかつて「徳本の腹を肥やせよ蕎麦の花」と詠んだ。上人といっしょに信州を旅し、上人の一日の食事が一合のそば粉であることを知り、驚いて詠んだ句。恥ずかしながら筆者は一茶と上人の関係についてあまり知らなかったが、この句のおかげで、日高町とそばが結びつく。全国的にもそうだが、名物や名所をPRする場合、何か物語やストーリー性があったが方がいいと言われている。そういった意味で、同町での上人顕彰とそばの名物開発はうってつけで、徳報会の目の付けどころに感心した。
 さらに、一茶は上人の教えに従い念仏を唱え、「上人の口真似してやなく蛙」と詠んだほか、虚弱なわが子の無事を祈り、上人の徳にすがりひたすら念仏を唱えたとされ、上人と一茶の関係は深い。将来的には上人の生誕の地でそばを食べ、一茶と旅した信州を巡るなど、広域的に連携した観光ツアーが企画できるかもしれない。日高町のそば栽培に大きな可能性を感じる。(吉)