由良町の白崎海岸を車で走っていて、ふと大引の山腹を見上げると、数多くの住宅が立ち並んでいるのに驚いた。というのは筆者が昔、由良の取材担当をしていたころは数軒しかなかったからで、いまは遠目に見ると「びっしり」という表現がふさわしいほどの数になっている。
 町などによると、100軒ほどあり、ほとんどが別荘。由良町は日本のエーゲ海と呼ばれ、白い石灰岩の岩山などの景観が素晴らしい上に、釣りの好ポイントとしても人気があり、もともと別荘はあったが、この20年間の間に白崎海洋公園がオープンしてスキューバダイビングのメッカとして定着したことや白崎クルーズなど観光の体験イベントも充実してきたことで、別荘地化に拍車がかかった。
 別荘の場合、所有者はその地域に住民登録をするわけではない。だから別荘が増えても「町の人口が増えず、ゴミが増えるだけ」とマイナス面もある。失礼な言い方だが、普段から顔を知らない人がやってくることには、防犯などの面で少なからず心配も出てくる。しかし、一方で普通の住宅に比べ別荘の固定資産税が高額となっているので、町への税収増のメリットがある。人が来れば、地域の物を買うなど経済効果や、その人自身が広告塔となって町をPRしてくれることも期待できる。
 由良町の場合、ほかに別荘地の分譲地をするには、山林を開発するなどしなければ用地がないため、いまのところこれ以上、別荘が増えるかどうかは分からない。民業圧迫を考えると、行政が別荘地の開発に乗り出すのはどうかとも思うが、〝日高地方の軽井沢〟を目指して何か町の施策に取り入れてもおもしろいかもしれない。 (吉)