世界農業遺産(GIAHS)専門家会議」が8日に東京の農林水産省で開かれ、世界遺産登録を申請している全国7地域がプレゼンテーションを行った。みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会(会長・小谷芳正町長)を含めすべての地域が事前評価を通過。みなべ・田辺では9日から現地調査に移り、10日までの2日間の日程で行われる。
 みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会は「みなべ・田辺の梅システム」で申請。約400年前から山の斜面を利用して梅の生産・加工が行われ、それ以前から伝わる製炭技術とともに、環境面でも生計面でも持続的な農業を確立していることなどが特徴。
 プレゼンテーションには小谷会長ら13人が出席。みなべ・田辺がトップで発表し、みなべ町役場うめ課の林秀行課長がプレゼンターを務めた。有識者として和歌山大学システム工学部の養父志乃夫教授ら5人が加わった。林課長はスライドを使いながら、「梅システム」の特徴や地域産業の歴史などを15分間にわたって審査員7人にアピール。委員からは「薪炭林と梅畑の土地利用はどうなっているのか」「梅とミツバチの関連性を詳しく知りたい」「薪炭林の管理はどのような形なのか」などという質問があり、事務局や有識者が対応した。その場で結果発表はなかったが、午後6時ごろ、担当職員に「事前評価通過」と連絡が入った。今回の審査を受けて9・10日に審査員2人が現地調査を実施。初日には田辺市の紀州石神田辺梅林、秋津野直売所、秋津野ガルテンなどを訪れた。2日目はみなべ町の炭窯・伐採林、梅加工工場などで調査となる。各所で地元住民が対応し、思いを伝える。
 みなべ・田辺地域のほか、「水鳥を育む湿地としての大崎の水田農業地域」(宮城県)、「平地林が支える三富新田の循環型農法」(埼玉県)、「里川における人とアユのつながり」(岐阜県)、「徳島・剣山の傾斜地農耕システム」(徳島県)、高千穂郷・椎葉山の森林保全管理が生み出す持続的な農林業と伝統文化」(宮崎県)、「抱護の林帯に守られた沖縄の伝統的な小規模農業システム」(沖縄県)の6地域が申請。今回のプレゼンでは、他地域とは差がついていない。小谷会長は「プレゼン後の現地調査が重要なポイントとなる。地元住民の思いを伝えてもらいたい」、プレゼンターを務めた林課長は「伝えたいことは伝えられた。現地調査では、地域の魅力や良さをアピールしていければ」と話している。
 国内の候補地が決定する最終評価は10月20日。その後、12月に国連食糧農業機関(FAO)に申請される。順調に進めば、来年5~6月に開かれる世界農業遺産フォーラムで認定される見込み。