御坊市島の日高高校で30日、陸上競技部の同校創立百周年記念事業が行われた。同部OBでオリンピック50㌔競歩3大会連続出場の小坂忠広さん(54)=石川県立小松特別支援学校勤務=を講師に招いての講演と実技指導。小坂さんはふるさとの後輩たちを前にした講演ではアスリートの記録向上へアドバイスしたうえで、「東京オリンピック(2020年)を目指して頑張ってほしい」とエールを送った。
 小坂さんは田辺市龍神村出身で、昭和52年度の卒業生。日高高時代は2年生と3年生時に全国高校駅伝に出場し、アンカーとして活躍した。大学は順天堂大に進み、卒業後は1988年のソウルを皮切りに92年のバルセロナ、96年のアトランタと3大会連続でオリンピックに出場。2012年のロンドン五輪では陸上競技日本選手団のコーチを務め、現在は日本陸上競技連盟強化委員会競歩部副部長などとして世界に通用する選手の育成に尽力している。
 講演では「オリンピック出場から思うこと」をテーマに、五輪出場の思い出、中学校時代からの「自分史」、五輪3大会連続出場の要因、五輪出場で得たものなどを語った。自分史では、日高高校時代について当時の練習スケジュールを示しながら「(いまの)日本代表のスケジュールも大体こんな感じ。かなり素晴らしいメニュー」「いい仲間に恵まれた。それが私の誇り」などと話し、よき環境とライバルの存在が自身の競技力向上を支えたと振り返った。
 五輪3大会連続出場の要因としては、自分のマニュアルトレーニングを確立したこと、1カ月に何度も行った血液検査で体調管理を徹底したこと、栄養と休養に特段気を使ったことなどを紹介。「1日4回体重測定をした。朝起きてトイレ後1回、練習前1回、練習後1回、寝る前1回。体重が減ってきたときは栄養をしっかりとるのがアスリートにとって一番大事と思う。栄養、休養、練習のどれか一つでも欠くと競技力は向上しない」と具体的な説明を付け加え、36歳で日本最高記録を樹立できた秘訣も伝授した。
 五輪出場を通じて得たものは「オリンピックに出たと思うと、何かあったとき打ち勝っていける。自分の人生の支え」「出場を支えてくれた皆さんに感謝する、そういう気持ちになった」と述べ、「2020年の東京オリンピックまであと6年。皆さんもぜひ目指してほしい」と呼びかけた。質疑では記録が伸び悩む選手に「何か原因があるからというのは間違いない。心理的、精神的、いろんなデータを見た中で何が原因か調べ、一つ一つ解決していくことが大切」と指導も行った。
 記念事業には現役の日高高校陸上部選手や地元の小中学生アスリート、指導者、一般来場者、高校時代の同級生ら約160人が参加。講演は、高校時代の同級生が小坂さんの横に並んで紹介を受けるなど和気あいあいとしたムードで行われた。講演終了後にグラウンドであった実技指導では、競歩の基礎について現役の小中高校生選手が学んだ。