劇団RAKUYU(松本こうじ代表)の第11回公演は31日、御坊市民文化会館大ホールで行われた。今回は子どもと大人の2本立て。少年と子ギツネの交流を通じて自然の大切さを訴える「夕陽の声」を子ども団員が熱演したあと、大人団員が人情コメディ「煙が目にしみる」をじっくり見せた。
 「煙が目にしみる」は声優・俳優の故鈴置洋孝原案、堤泰之脚本で、現代演劇ではよく知られた名作喜劇。斎場を舞台に、2つの家族にまつわる悲喜こもごもの人間模様を描く。斎場で焼かれるのを待つ2人の故人は「あの世へ行く前に家族に伝えたいことがある」と白装束姿で斎場をさまよう。認知症が始まったと思われているおばあちゃんにだけは彼らの姿が見える。それぞれに事情を抱え、もめごとを起こしかけていた2つの家族だが、おばあちゃんが「人の死というものは、その人が生きてる間にかかわったすべての人達のものです。亡くなった方への思いは、かかわった人の数だけあるんです」と訴え、故人の言葉を伝えたことから誤解が解け、温かな交流が生まれる。最後には、2つの家族が仲良く1枚の写真に収まって幕が下りる。突然の別れを悲しむ家族の姿はしみじみとした共感を呼び、イタコとして死者の言葉を伝えるおばあちゃんのとぼけた味わいの演技に笑いと拍手が起こっていた。
 「夕陽の声」では、開発で住みかをなくしてしまう子ギツネたちの悲しみ、何もできない自分をくやしく思う少年の思いを子ども団員が熱演。温かな拍手が送られていた。
 ロビーでは、昨年8月に他界した同劇団メンバーでイラストレーターのかりやぞののり子さんの追悼作品展も開かれた。