28日付の本紙で紹介した「カラス天狗のミイラ」については、ここ数年取り上げる機会がなかったため、すっかり頭から消えていたが、大変貴重なものだとあらためて感じた。確かに県が行った断層撮影でトンビとみられる骨や粘土で作っていることが分かり、いわゆる〝偽物〟。「空想上のカラス天狗が実在したのではないか」というロマンはなくなったが、かつての信仰の対象になっていたことや当時の製造技術を伝えるということだけでも歴史的資料の価値が高い。何よりも国内で唯一現存するカラス天狗のミイラであることの意味は大きい。
 何が言いたいのかというと、そんな国内唯一の〝宝物〟を見に来てもらえるような工夫やPRがもっと必要だということ。正直言って現在展示されている御坊総合運動公園内の歴史民俗資料館では、場所的な問題があるのか、あまり注目されていないような気がする。そこで思うのが寺内町観光推進に向けた活用。横町の中川邸では、そば屋のオープンに続き、近く住居部分を改修してさまざまな展示の場にするが、その一角にカラス天狗のミイラを置かせてもらうのはどうだろう。ミイラはもともと所有者の山伏が行き倒れになった小竹八幡神社で保管されていたという点で、寺内町にゆかりもある。
 ただ、記事でも紹介したが、ミイラの老朽化が深刻になっている。しかし、保存処理するには数百万円が見込まれているため、そう簡単にできることではない。しかも、これだけ貴重なミイラであっても何の文化財指定も受けていないことから他の機関からの補助金が受けにくいという。それならまずは文化財指定から進めるのはいかがだろうか。 (吉)