取材などで高齢の方と話す機会があると、「戦時中はどうでしたか?」と尋ねたこともある。終戦時は学生だったという人が多いが、その答えは「戦争に行きたかった。死ぬのも怖くなかった」「アメリカ軍が上陸して来たら竹槍で突進する覚悟だった」と振り返りながら話してくれた。理由を聞くと、「学校で教え込まれていたから」という。たとえ誤った考え方であっても、教育の力が人を納得させるし、大衆の大部分がそう考えれば自分自身も周囲に合わせてしまうのかもしれない。環境で人の考えが変わってしまうという恐ろしさがある。
 近年では中国の海洋進出がいわれ始め、日本も東シナ海に位置する尖閣諸島に対する不安感が広まりつつある。一方では安倍政権が閣議で集団的自衛権を決定し、住民からは賛否両論の声が聞かれている。しかし賛成派、反対派の考え方は違えども、戦争のない平和な社会を望んでいることには変わりない。これは国籍を問わず、共通の認識だろう。
 現代人の使命はいまの平和を守るということ。戦争の史実を風化させぬことが重要だが、戦争体験者は年々少なくなりつつある。その悲惨さ、悲しさを体験者の声で後世に伝えることは難しくなっているのが現状だ。
 昭和20年の終戦から、今月15日で69年を迎える。みなべ町では15日まで南部公民館とゆめよみ館で「平和を考える展示会~平和の心を伝えよう~」が開かれている。当時の子どもたちが習った小学校の教科書や暮らし、新聞報道内容などの資料が並んでいる。ぜひこの機会に足を運んでいただき、平和のあり方を見直してもらいたい。展示品から戦地の声が聞こえてくるだろう。    (雄)