全国的にイノシシ、シカなどと同じようにニホンザルによる農作物被害が深刻化している。日高地方も例外でなく、「明日、収穫しようと思っていたのに、昨晩に全部食べられてしまった」などとよく聞く話。家庭菜園ならまだしも生業(なりわい)としている農業者らにとっては死活問題だ。筆者の家の近くの山でも柿木の上でおいしそうに実をほおばる姿が見られ、農業者でなくともサルの増加は感じているだろう。
 そういったサルなどの対策を検討している日高地域鳥獣被害対策本部の研修会がこのほどあり、日高地方の農業者らが田辺市ふるさと自然公園センターの鈴木和男さんから「ニホンザルの生態からみる対策」で聴いた。それによるとニホンザルは野生のままでは一生の出生数は多くなく、また生まれても赤ちゃんのうちに死亡する確率も高く、繁殖力は決して高くない。明治期以来の乱獲では絶滅寸前まで減り、1940年代には観察するのも難しかったという。一方で、人里の近くで農作物などをえさにしているサルは出生数が多く、死亡率も低いほか群れ自体の規模も大きくなっているという。
 即効性のある対策として、印南町を中心に導入され始めている大きな音で威嚇(いかく)する花火のような「動物駆逐用煙火」などで、サルに侵入しないようにしつけることが大切。ただ根本的な解決に向けては、個体数を増やさせないことが重要。そのためには収穫の終わった作物や不要になった作物の部位を畑に破棄せず、適切に処分し、動物にとって魅力のない耕作地を作っていくことが必要。今回の生態からみたサルの対策を聴き、あらためてその必要性を感じた。   (城)