先日、近畿大学生物理工学部の公開講座で、元天王寺動物園園長で同大学教授の宮下実さんが講演した外来動物の話は興味深かった。アライグマは日本の固有種であるタヌキやキツネの生息域を奪っていることや、ハブ対策のために沖縄地方に輸入したマングースは実はハブはほとんど襲わず、奄美大島ではアマミノクロウサギが襲われ絶滅の危機にさらされている。田植えが済んだこの時期は、独特の鳴き声で幅を利かせているウシガエルも、食用に輸入された外来種。生態系をかく乱しているにっくき奴らも、好き好んで海を渡ってきたわけではないのが現実。悪行を放っておくわけにはいかないが、外来動物たちもまた、誤った知識を持った人間の犠牲者といえるだろう。
 身近なペットですらまともに飼育できない人がいるのだから、動物を取り巻くいまのこの有様は当然といえば当然か。例えばペ
ットの代名詞でもある犬。昔と違って野犬がほとんどいなくな
ったいまでも、県内で1年間に200頭近くが保健所に保護されている。昭和30年代と比べると10分の1、ここ10年でも半数以下に減っているが、飼い主の事情で子犬が捨てられるケースがあることを考えれば、決して少ない数字ではない。一部の無責任な飼い主が、かわいそうなペットを生み出しているのである。
 最近では、人に危害を加えてもおかしくないワニガメやカミツキガメなど凶暴な外来種が捕獲されるニュースが増えている。新たな生態系のかく乱はとどまる気配がない。人がまいた種は人が摘み取るしかない。動物を飼う前に、飼い主としての自覚と責任を持てるか、自問することから始めよう。(片)