高校生ながら100㍍で10秒01の日本歴代2位の記録をたたき出した17歳の桐生祥秀選手が注目を集めている。日本人初の9秒台が出るか期待されたが、先日の日本陸上選手権では慶応大3年の山県亮太選手に敗れて惜しくも2位。ともにまだまだこれからの選手、夢の9秒台に最も近い2人のこれからの活躍には目が離せない。同じ日本陸上選手権女子400㍍では高校3年生の杉浦はる香選手がジュニア日本新記録で優勝。いまどきの10代、20代の能力には驚かされるし、こんな話題は人を明るく、元気にしてくれる。
 一方で、文部科学省が毎年行っている50㍍走やソフトボール投といった小学生の体力・運動能力調査では、昭和60年以降毎年低下してきているという。テレビゲームなどの普及で外で遊ぶことが少なくなった、運動より勉強志向の保護者が増えたなど要因はいろいろ挙げられるが、それだけではない。「子どもにスポーツをやらせたいが、両親共働きで送り迎えどころではない」、こんな声をよく聞くのは筆者だけではないだろう。景気が低迷し日本全体に活気がない中、共働き世帯は増える一方。体力が落ちているのを子どものせいにばかりしていられない。根本には社会的要因も大きい。
 指導者となる親世代も当然、仕事が忙しく、そんな合間を縫って監督やコーチを務めてくれている人は非常に貴重な存在。文科省は子どもの体力低下を心配するなら、地域で頑張るスポーツクラブをもっと支援する政策を打ち出すべきだろう。心身たくましい子どもは地域の宝であり、育成は地域の使命。行政が、もっときめ細かな支援をしてもいいと思うが。(片)