「Aさんは気さくな人で媚(こび)を売らない。しかも土壇場に強くて臨機応変な対応もできる。無理はしないし、物事に動じない」。どうしようもない人もポジティブに、大人の言葉で言い換えればこのような表現ができる。実際は「いいかげん(気さく)で愛想が悪い(媚を売らない)。しかも計画性がなくて(土壇場に強くて)行き当たりばったり(臨機応変)。なまけもの(無理はしない)、にぶい(物事に動じない)」。言葉を換えれば180度、受け取り方が変わるから、あらためて言葉のチカラのすごさが分かる。
 ネガティブな言葉をポジティブに、短所を長所に言い換えたりする辞典や本が大人気という。社会人なら同僚、先輩、後輩、取引先の人との付き合いで、発言一つで人間関係が壊れてしまったり変な誤解を受けたりした経験が一度はあるはずで、そんなトラブルを回避するために活用されているようだ。自分も少しは参考にしたい。
 言葉は多くの人を動かさなければならない人ほど大事にする必要がある。リーダーと呼ばれる人はもちろんのこと、それだけではない。最近ではW杯サッカー日本出場決定直後の渋谷で、「皆さんは12番目の選手。おうちに帰るまでが応援です」と呼びかけて混乱を沈静化させたという機動隊員がいい例。まさにあっぱれだ。
 ツイッターなどで言葉が瞬時に世界中を駆け巡る時代。冒頭の言い換えのように本来の様子からかけ離れてしまうと意味がないケースもあるが、とにかく言葉選びは慎重にしたい。特に政治家たるもの、「○○流」とズバッと言い放つのもいいが、傍若無人な隣人につけこまれるようなら大人の言い換えも必要ではないか。(賀)