今月9日、市民文化会館でアマチュア劇団RAKUYUの結成15周年公演「奇跡の人 ヘレン・ケラー物語」が上演される。これが10作目の公演になる◆15年という時間は決して短くはない。人が生まれてから義務教育を終えるまでの年月だ。それだけの期間を通じてコンスタントに作品を生み出す。他に本業を持ちながらそれを持続するには、並大抵ではない気力と情熱が要る。そのことにいつも感心している◆「奇跡の人」は4年前に日高川交流センターでも上演されており、今回はいわば新バージョン。同劇団の魅力の一つはオリジナルの音楽だが、今回も生の歌声が劇を盛り上げる。子ども団員の出演も多く、舞台に活気を加える。何より、あまり一般に知られていないアニー・サリバン先生の過去が織り込まれ、物語に深みを与える。アニーは幼い弟と共に救貧院で育ち、目を患って一時失明していた。その体験が、ヘレンへの厳しくも熱い思いのこもった、本気の教育を成し遂げさせたのだろう◆そんなアニーを演じるのは、前回に引き続き、劇団旗揚げ当初からのメンバーである高畑繭理さん。全身全霊という言葉を体現する演技は圧巻だ。前回のヘレン役・宮井恵巳子さんは、天真爛漫な無邪気さで観客を魅了した。今回の柳本真希さん演じるヘレンは、繊細な部分を持った負けず嫌いな少女。同じ登場人物でも演者によって新たなキャラクターとして生まれ変わり、新たな作品世界を創り上げるモチーフとなるのが舞台の魔法だ◆キャストとスタッフの働きが結集され、観客の心がそこに集中した時、一つの舞台作品は完成する。今度の「奇跡の人」がどんな舞台上の奇跡を呼ぶか、楽しみにしている。 (里)