国内で行われたパーキンソン病治療の脳深部慢性電気刺激手術について、 術後は運動機能と日常生活動作に改善がみられ、 多くの患者が薬の減量につながったことが、 県立医科大の板倉徹学長が委員長を務める症例登録委員会の調査で分かった。 2030例に上る大規模な調査は世界で初めて。 今後はより症状の改善効果が高い脳内刺激部位の発見が課題になるという。
 パーキンソン病は、 脳内神経伝達物質のドーパミンが何らかの原因で減少することにより、 体の動きが鈍くなり、 手足が震え、 筋肉がこわばる、 自律神経障害などの症状が出る難病。 歩き方は前かがみでヨチヨチ歩きのようになり、 転びやすく、 前のめりに転んで顔面をけがすることが多い。
 患者は白人に多く、 黒人に少なく、 日本人など黄色人種はその中間という人種的な偏りがみられ、 国内の患者数は20~30万人、 和歌山県内には5000~1万人程度と推測されている。 日本人は50歳を過ぎた中高年層が多く、 男女比はほとんど変わらないという。
 調査は和歌山県立医大に事務局があり、 板倉学長が委員長を務める日本定位機能神経外科学会症例登録委員会が、 平成16年から23年まで8年間に国内で行われた脳深部慢性電気刺激手術2030例を対象に実施。 術前と術後の効果判定、 術後合併症の有無などを調査・分析した結果、 細長い電極を頭蓋骨に穴を開けて脳に埋め込み (局所麻酔)、 手術全体の88%を占める視床下核への刺激では、 運動機能と日常生活動作に大きな改善がみられ、 和歌山県立医大が得意とする高次脳機能障害リスクの少ない淡蒼球 (脳の部位) でも同様の効果が確認できた。 また、 術前後の薬の量をみても、 視床下核、 淡蒼球とも術後は多くの患者で減らすことができた。
 10日、 記者発表した板倉学長は 「これからの展望として、 もっと効果のいい (電気刺激を与える) 脳の場所を発見し、それをいかに国内、 世界に広めていくかが私たちの課題。 和歌山県立医科大は日本の中で脳深部電気刺激手術を多く行っている施設の1つであり、 今後も積極的に手術を行っていきたい」 と話した。