淡いピンクの花をつけるササユリ。カサブランカなどのように派手さはないが、清楚な姿で甘い香りを漂わせ、見る者に癒やしを与えてくれる。筆者もとても好きな花の一つで、5~6月の開花シーズンには日高川町内の竹林内の小径「景子の夢の道」やみやま森林公園へ写真撮影に行くが、毎回うっとりと見入ってしまう。
 自生のササユリは、母が子どものころなどにはよく見かけたらしいが、近年は乱獲や環境の変化などで激減。市場価値は高いが栽培するにも課題が多いという。実は景子の道などのは自生花ではなく、同町のバイオセンター中津が培養したバイオササユリ。平成8年からバイオ技術を使って培養を始め、いまでは年間約5万個の球根を生産、切り花も約1万5000本を出荷するなど特産化に成功した。
 
そんな中、ことし5月関係者に朗報が舞い込んだ。栽培農家のほ場で無花粉のササユリが出現したのだ。ユリの花粉は衣類などに付着したり、花粉アレルギーの人も増加していることから無花粉ユリの人気が高まっている。花には無頓着な筆者だが、花びらに花粉がつかなければ一層美しいだろうし、服が汚れた経験もある。近年は無花粉ユリへの品種改良が進み、多くの品種がある。センターでも無花粉ササユリのクローン培養をスタートさせた。もとの個体が環境的な変異ではなく、遺伝的な要因で無花粉となっているのであれば、数年後には無花粉のクローンササユリが誕生する。より一層の普及促進や特産化、さらにはブランド化へと夢いっぱいに広がる取り組みで筆者もわくわくしている。遺伝的変異であってほしいと願いつつ、取り組みの行方に注目をしていきたい。   (昌)