先日、久しぶりに電車に乗った。夏休み期間だったが、クラブ活動で登校する高校生らも多く、座る席がない状態だった。そこに1人のおばあちゃんが乗車。すると、女子高生がすぐに立ち上がって席を譲った。おばあちゃんも電車から降りる際に「ありがとう」とニッコリと笑顔でお礼の言葉をかけて降りた。この光景は日本では当たり前のことで、逆に席を譲らないと周りから白い目で見られてしまう。こういう自己犠牲の気持ちが大切なのは言うまでもなく、「お年寄りには席を譲る」という教育が広く浸透していると感じた。
 終戦からことしで66年が経過した。焼け野原となった日本が世界の経済大国にまで発展したのは、日本人が持っている人情や自己犠牲などの美学があったからではなかろうか。以前、戦後の日本の復興に関するテレビ番組を放送していたのを記憶している。番組で印象的だったのが、終戦直後にアメリカ兵が日本の子どもにチョコレートを与えたところ、その子どもは半分だけ食べて残りの半分は妹の分として家に持ち帰ったという出来事があったことが紹介され、アメリカ兵は「この国は必ず復興する」と感じたという。これは電車で席を譲った女子学生と自己犠牲という点では同じといえる。
 いままた日本は、3月11日に発生した東日本大震災で大きな国難に直面している。復興に向けて大きな力となるのは人を思いやる心。ボランティア活動などの根底にはその気持ちがあり、民間の助けがあってこそスピーディーな復興につながる。東日本大震災の復興には、日本人がこれまで受けてきた教育や培ってきた人間性が試されているのではなかろうか。   (雄)