本県でもイノシシやシカなど有害鳥獣の農作物被害が深刻化する中、環境省の中央環境審議会野生生物部会が有害鳥獣の捕獲推進に向けた基本指針をまとめ、来月中旬に告示する。
 この指針の一番のポイントは、狩猟免許を持たない人でも講習を受講すれば免許所持者の監督の下でわなを使った有害鳥獣捕獲に参加できることだろう。これまで被害を受けた農家ではネットを張ったり、電気柵を設置したり、自分の田畑を守るための対策が中心だった。もちろん、ハンターや行政の協力を得てわなを仕掛けてもらうこともあるが、たくさんある田、畑全てに対応できるはずもなかった。しかし、今度は農家の人たち自らが立ち上がるときがきた。狩猟免許保持者の監督下という若干の条件は付くが、事実上自分たちがわなを仕掛けて捕獲するという攻めの姿勢に転じることができる。
 ただ、いろんな場所の田畑にわなが仕掛けられるようになると、人への事故が心配される。わなの種類にもよると思うが、例えば檻(おり)のわなに興味本位で近付いた子どもが閉じ込められたり、落ちてきた檻の扉に腕を挟まれ骨折等々。こんなことが起きないよう十分な注意、啓発が必要。あと、農家の人たちが捕獲した鳥獣をどうやって処分するのかも問題。自分でするのは危険だから、もちろん監督している狩猟免許保持者が銃殺などするのだろうが、その人がたまたま地元にいなかったり、連絡が取れなかったりしたらどうするのか。今後、どんどん捕獲が増えると予想されるので、行政で「捕獲鳥獣処分隊」みたいな組織をつくって対応すればいいのではないだろうか。
 いずれにしても鳥獣被害の軽減に期待したい。 (吉)