「一投一打に魂込めて」「仲間とともに最高の夏へ」「夢実現へ全力プレー」。そして今夏が「夢に向かって正々堂々プレー」。全国高校野球選手権和歌山大会が開幕すると、地元勢の活躍を紹介する特集号を掲載していくが、筆者が担当するようになってから紙面共通の大見出しはその時の選手宣誓から引用している。開会式、その晴れ舞台の中でも1人の球児が代表して、時世に合わせて熱い思いを発表する選手宣誓には毎年注目しており、その夏のテーマのように扱っている。
 選手宣誓には、いつも盛り込まれる言葉がある。「感謝」だ。3年生にとっては最後の夏。これまで指導してくれた先生、支えてくれた保護者、それに地元の人たち、チームメート。周囲の、多くの人たちのおかげで野球が続けられ、晴れ舞台に立てた喜びを「感謝」の二文字に表しているように思える。今夏は串本古座の柏雄飛主将が選手宣誓。「たくさんの方々に支えられ、大好きな野球ができることに心から感謝」と声を張り上げ、フェアプレーを約束していたのが印象的だった。
 今春、他界された尾藤公・元箕島高監督は「野球は他のスポーツと違って人がホームを踏んで初めて点になる」との言葉を遺されているという。ボールをゴールへ入れるのではなく、人と人とが協力し合い、時には自分を犠牲にして仲間を次の塁へ進めることも要求される。自分一人では戦えない。周囲の人たちの力がなくてはならないのが野球。それを理解できた時、自然と「感謝」の言葉が口をつくのだろう。
 感謝する心から、信頼や絆も生まれる。この夏、熱戦は早くも中盤入りだが、球児たちの全力プレーを見て宣誓に込められた思いも感じてほしい。
       (賀)