晩秋の11月。今年は気温が高く見ごろはまだまだですが、テーマは「紅葉」とします。

 「国家の品格」(藤原正彦著、新潮新書)

 2005年発行。数学者の著者が、西洋の論理万能主義でなく「情緒と形の文明」を持つ日本という国独自の「品格」を説き、ミリオンセラー本となりました。

 日本ならではの繊細な自然と四季について書いた章で、紅葉の美しさに驚く欧米人が描かれます。

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 ケンブリッジ大学の数学の教授が、蓼科にある私の山荘を訪れました。ちょうど秋だったので、紅葉狩りに連れて行きました。そしたら彼は「ほんとうに美しい」と驚くのです。「アメリカやイギリスでも紅葉を見たことがある。ところが、三時間車をとばしても、右も左も真っ黄色というような単調さだった。日本の場合は、日当たりや、山のどのあたりにあるかで色や鮮やかさが異なり、とても美しい」と。(略)「日本の楓の葉は、非常に繊細で華奢だ。欧米の楓の葉は、もっと大きくて厚ぼったい。そのせいか色の変化が大まかだ。それに比べ日本の楓の葉は、薄く繊細なうえ、一つの木にも紅い葉、オレンジの葉、緑の葉などがあり色彩が豊かだ」。