柔らかく弾力のある肉質の紀州うめどり

 和歌山のブランド鶏「紀州うめどり」の生産が再開され、今月から順次、飲食店や精肉店へ販売を広げていく。全国的に知られたブランド鶏復活に向け、地元業者で構成する紀州うめどり・うめたまご協議会や関係者が一から組織を立て直し、約2年がかりで生産体制を確立。広報を担う協議会は「以前よりも安心・安全でおいしい紀州うめどりを食卓にお届けします」と胸を張る。

 紀州うめどりは、県とみなべ町の梅加工業者紀州ほそ川が2003年に共同開発した。梅酢から抽出した成分を混ぜた飼料を与えることで肉のうまみが凝縮されるのが特長。08年には食肉産業展の鶏肉部門で日本一となり、その名を全国に知らしめた。 

 しかし19年12月、生産を委託していた有田養鶏農業協同組合(有田川町)の経営破綻により生産が停止。日高川町や田辺市にある組合の養鶏場は、県による行政代執行で計14万羽の死骸が処分され、そのニュースが話題となった。

 生産停止から約2年、養鶏場は競売に出され、有田川町の鶏肉生産会社御坊チキン(崎山博俊社長)が落札、生産の再スタートを切った。協議会メンバーも再開に向け、クラウドファンディングなどさまざまな取り組みを展開。しかし、経営破綻した組合は県内でも数少ない大規模な加工処理場も運営していたため、以前のように生産しようにも工程が安定せず、コロナ禍の影響もあって思うように進まなかった。

 現在、協議会の会長を務める紀州ほそ川の細川陽介代表取締役(41)は、東京で銀行員をしていたが、うめどり復活のために退職。家業の会社を継いで協議会のメンバーとなり、生産体制づくりに奔走した。「県内に大規模な処理場がなかったので、その協力業者を見つけるのに本当に苦労しました」と当時を振り返る。

 各地の鶏肉加工業者に協力を依頼する中、協議会加盟企業の紹介で京都府福知山市に工場を置く業者の協力が決定。こうして一番のネックだった加工処理場の課題もクリアし、生産停止から約4年の歳月を経て、現在は一日約1400羽を出荷できるようになった。

 協議会では以前よりも開かれた組織づくりに励み、県内のさまざまな賛同者に関わってもらいたいと考えている。細川会長は「興味がある養鶏農家の方にもぜひ関わっていただきたい。みんなで和歌山から全国に愛されるブランド鶏に成長させたいです」と話している。

 紀州うめどりの詳細はホームページ(https://umedori.com/)。