「地球の肺」とも呼ばれる南米アマゾンの森林が、人間の乱開発や伐採によって急速に失われています。経済が安定しないブラジルでは、高く売れる肉牛の放牧地を広げるため、森を不法に焼く行為が止まらず、エクアドルでは世界中の悪の組織が金を採掘するために森をどんどん伐採しているそうです。

 このままでは地球はCO2(二酸化炭素)で埋め尽くされ、温暖化による気候変動が進み、異常気象、食糧難、伝染病の世界的流行などさまざまな危機に見舞われます。国連が提唱している約200年前の「産業革命からの地球の気温上昇を1・5度以内に抑える」という目標を達成するには、7年後の2030年までに地球上のCO2排出量を現在の半分に減らさなくてはならない。そこで奮闘しているのが本書の著者。すでに家庭用のCO2回収マシーン「ひやっしー」を開発、販売し、CO2から液体燃料を作り出すという嘘みたいな話を実用化しようとしています。

 驚くのはこの著者の村木さん、年齢がまだ23歳。小学4年生のときから地球の温暖化を止めるための発明を続け、あのイーロン・マスクよりも先に「人類で初めて火星に降り立つ」という目標を実現するため、研究を続けているそうです。

 これまでの発明をみても、家庭用・事業所用のひやっしー、ひやっしーで集めたCO2にある薬品と油を混ぜるだけで瞬時に軽油に代わる液体燃料を生み出す「そらりん」など、その発想は「逆転」どころか、無から生み出す手品のような話。がん治療の分野では、同じ日本人の医師が発明した光免疫療法が注目を集めていますが、衝撃と期待の大きさはそれと同等、あるいはそれ以上で、人知れず着実に前進しているところが恐ろしささえ感じます。

 実際、どれも専門の研究者にしか分からない難しい話なのでしょうが、著者はまるでさかなクンのようなノリで、小学生にも分かるように面白く説明しています。温暖化を止めるという地球規模のプロジェクトを進めるには、国家的な大事業として取り組む必要があり、その国が本気で動くためには国民一人ひとりの「やればできる」という意識改革が重要。そのためには誰もが理解し、効果を体感することが必要との信念から、子どもたちに向け、考えて挑戦することの大切さを訴えています。

 宇宙には私たちの地球以外にも、高度な文明を持つ生命体が活動する星がどこかにあるとは思いますが、宇宙人がUFOに乗って地球へ来ているというのはあまりに非現実的。しかし、地球を温暖化から救い、さらにフロンティアを求め、「世界で初めて火星に降り立つ」と本気で宣言する村木君の話を聞けば、地球人が他の惑星に移り住むという話が夢ではないような気になります。世界を変える、世界救うとんでもない日本人が出てきました。(静)