御坊市で甚大な被害を出した昭和28年の7・18水害では、堤防の決壊による死者・行方不明者合わせて約220人の犠牲者が出て、床上浸水約4000戸、床下浸水約300戸、家屋流出約550戸などの被害が記録されている。その後、椿山ダムの建設や河川改修が行われ、御坊市では大きな被害はないが、2011年の紀伊半島大水害の時には藤井の堤防があと1㍍で越水するほどまで水が迫った。

 現在、小熊大橋から天田橋まで、特に藤井グラウンド付近から野口までの区間には見た目にも分かるほど堆積土砂があり、川底が上がっているように思う。また、紀伊半島大水害以降、被害が出た上流部で河川改修が行われて流下能力が向上しているため、下流の御坊市域への影響も考えられる。仮に紀伊半島大水害と同じような規模の雨が降れば日高川が氾濫し、日高平野が浸水してしまうことが懸念されている。ただ、河川を管理する県としては「御坊市域はおおむね十分な流下能力を有する」として、現時点ではしゅんせつは困難とのスタンス。

 こういった膠着(こうちゃく)状態を打開しようと、御坊市自主防災組織連絡協議会が先日、二階俊博衆議院議員や国土交通省幹部にしゅんせつを要望したのは既報の通り。二階氏からは「問題のあるところは思いっきりやったらよい。やれないことはない」との言葉で、地元にとっては心強い。

 県は本年度に実施している日高川の航空測量の結果を見てあらためてしゅんせつが必要かどうか検討するとしている。大切なのは地域住民が抱える不安の払しょく。県がどういった方向性を打ち出すのか、注視していきたい。(吉)