祈祷後に尾上さん㊨と小野院主

 歌舞伎役者の二代目尾上右近さんが10日、日高川町鐘巻の道成寺を訪れ、8月に浅草公会堂で行われる自主公演での「京鹿子娘道成寺」成功を祈願した。

 尾上さんは舞踊の清元宗家に生まれ、曽祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父は俳優の鶴田浩二。7歳の時に歌舞伎座で初舞台、12歳で二代目尾上右近を襲名した。屋号は音羽屋。NHK大河ドラマ「青天を衝け」で孝明天皇、映画「燃えよ剣」で松平容保を演じるなど幅広く活躍している。

 8月2・3日に浅草公会堂で上演される自主公演「研の會」では「夏祭浪花鑑」「京鹿子娘道成寺」を上演。「娘道成寺」では初めて白拍子花子を演じる。1時間以上を女方役者1人で踊りきる、歌舞伎舞踊の最高峰とされる格の高い演目。

 道成寺を参拝し本尊の国宝千手観音菩薩を前にした尾上さんに小野俊成院主は「千手観音様は、手を変え、品を変え、人々を助けて下さる観音様。その中の一つに道成寺物の演目があると思っています。観客の皆さんはこの演目の舞台を鑑賞するだけで、観音様に手を合わせていることと同じ。役者さんはその橋渡しをしています。成功をお祈りしています」と話した。小野院主の読経の中、尾上さんは焼香し手を合わせて舞台の成功を祈り、安珍清姫の絵とき説法も聞いた。

 尾上さんは「歌舞伎の先人たちが創作し、手掛けてきた娘道成寺で白拍子花子を演じるに当たり、できる限りのことをして舞台に臨みたいと思い参拝しました」と話し、「踊りきるだけでも大変と言われるお役で不安もありましたが、道成寺の空気を感じて心が落ち着き、作品にどういう魅力があるのかあらためて気づかされました。自主公演といこともあり、自分から手を伸ばしてご縁をつくったお役。心して演じたいです」と意気込みを見せた。