購入した家にスペースチューブを設置(右が福原さん)

 舞踏家、作家、写真家など幅広い分野で活躍する静岡県富士市出身の福原哲郎さん(74)が昨年10月、御坊市湯川町富安に移住。購入した家に無重力のような体験ができる筒状(延長約10㍍、高さ約2㍍)の空間「スペースチューブ」を設置した。子どもたちが中に入って遊ぶことで体のバランス機能を高める効果が期待でき、御坊発の新しい事業展開を考えているという。

 福原さんは、ニューヨークの国連本部など海外40都市でダンス公演などを開催。1997年から2001年までは武蔵野美術大学非常勤講師を務めたほか、01年には外務省海外派遣としてトルコでダンス指導などに当たった。和歌山県への移住は、好きな海や山、世界遺産の熊野古道があることなどから決めたという。

 スペースチューブは筒状にした特殊な布をロープで空中に張り、そのトンネルの中に入って体を動かせる空間。空を飛んでいるような気分が味わえ、無重力のような体験ができる。福原さんが武蔵野美術大学に勤務していた当時、指導した学生がワークショップで考えた筒状にした布の空間を基に考案した。

 NASA(アメリカ)の技術者リチャード・リラーさん、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岩本裕之さんらの人脈を通じ、04年から06年までJAXAと「無重力環境における人間の姿勢と脳機能の変化」をテーマとした共同研究を行い、その際にもスペースチューブを活用した。合成繊維などを製造している東レ株式会社が開発した新素材を使用することでスペースチューブの伸縮性や反発力を高め、子どもたちが異次元の体験をできる空間になった。

 現在、御坊市で考えている事業は小学生10人程度を対象とし、教育関係者やマスコミなどを加えたチームを結成し、スペースチューブを使ったワークショップを定期的に開催。単なるイベントではなく、子どものバランス感覚などの効果を検証し、必要なデータを蓄積して新しい時代に対応した教育成果を確立するという。

 福原さんは「子どもたちの豊かな身体性を養い、今後のデジタル社会でたくましく生き抜くために必要な新しい科学的センスを身につけてほしい」と話している。

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