6434人の命が奪われた阪神・淡路大震災の発生から17日で28年を迎えた。各地で追悼が行われ、犠牲者を悼んで鎮魂の祈りがささげられた。神戸市の追悼式では震災を知る世代と知らない世代をつなげるという意味を込めて「むすぶ」の文字に並べた灯籠に火がともされた。

 当時、筆者は和歌山市のアパートで一人暮らしだった。朝方に大きな揺れですぐに目を覚ますと、部屋の家具や電灯が大きく揺れた。今までに感じたことのないような体験だったが、しばらくすると揺れが収まり、テレビをつけると、煙が立ち上っているまち並みの映像が流れていた。この時になって事の重大さに気づかされた。幸い和歌山市内は震度4で、大きな被害はなかったが、それでも壁にひびが入った住宅などがみられた。

 震災後、建築基準の見直しなどが図られたほか、大災害時では公助が役に立たず、自助や共助の役割が言われ始めた。復旧についてもボランティアセンターの運営や仮設住宅の重要性など多くの教訓が残された。

 紀伊半島に位置する日高地方は以前から南海トラフ地震の発生が懸念されている。政府によると、今後40年以内にマグニチュード8~9級の地震が起こる確率は90%程度だという。被害想定では静岡県から宮崎県にかけての一部で震度7となる可能性があるほか、広い地域で震度6強から6弱の強い揺れとなり、関東から九州にかけての太平洋沿岸では10㍍を超える大津波の襲来も想定されている。

 過去の災害から日本人は多くのことを学んでいる。南海トラフ地震に直面する我々はその教訓をどう生かすのか。過去を現在と未来で結んで考える必要がある。(雄)