5月3日はいうまでもなく日本の憲法記念日だが、他にもこの日を「憲法記念日」とする国がある。ウクライナの隣国、ポーランドだ◆ショパンやキュリー夫人の故郷だが、それよりも最近はウクライナから約300万人の避難民を受け入れていることなどでよく報道される。国名の語源は草原を意味する「ポーレ」。山脈など天然の要害に恵まれず、4度にわたり国土を分割されるなど周辺の大国に翻弄された。それはウクライナにも共通する歴史である◆その憲法の名は「5月3日憲法」という。成文化された近代憲法としては米国に次いで古く、230年以上前の1791年に成立。しかし施行されたのは翌92年までのわずか1年間と、あまりに短い期間だった。にもかかわらず、この憲法が採択された5月3日はポーランドの「最も重要な祝日」であり続けた◆それは現代の基準に照らしても先進的かつ民主的な内容であり、三権分立などが明記されていた。農奴制という悪習の軽減が目的だった。しかし当時の欧州世界では「危険思想」とみなされ、周辺の大国の思惑などから戦争に。ポーランド王国は敗戦し、消滅した◆ポーランド共和国として復活したのは123年後の1919年。再び5月3日を祝日としたが、第2次大戦中はナチスドイツとソ連の占領軍に廃止された。そして終戦44年後の89年9月、東欧民主化革命の先陣を切って非共産主義国家「ポーランド第三共和国」が成立。晴れて、5月3日を祝日とすることができた。国を失っていた123年間、「5月3日憲法」は主権回復への戦いを導くかがり火であったのだ◆過去の上に今が築かれ、今の上に未来が育ってゆく。今に連なる過去を知ることは、未来を見晴るかす羅針盤を得ることである。(里)