牛丼チェーン吉野家の伊東正明常務(49)が、女性を蔑んだ不適切な発言をしたとして解任された。事の発端は早稲田大主催の社会人向け講座。マーケティング戦略で、若者を牛丼好きにする方法を受講生に説明する際、「田舎から出てきたばかりの若い女の子を、生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯をおごってもらうようになれば、牛丼は絶対に食べない」という趣旨の話をしたという▼伊藤さんは慶応大学卒業。1部上場の消費財メーカーのP&Gに入社し、今では生活用品として定着した「ファブリーズ」を日本に広めた人物と言われる。その後、吉野家に転職。商品開発力で優れた能力を発揮した優秀な社員。今回の不適切発言に関し、ある経営コンサルタントは「日頃から同じようなことを言っていたのかもしれないが、周囲からの抑止が効かなかった結果と感じます」とコメントした▼人間は環境で行動や意識が変わる。職場に例えると、イエスマンばかりで囲まれた社長は、おのずと自分の考えがいつも正しいと錯覚してしまいがちになる。それは社長に限らず、何もかもが自分の思い通りになりすぎる人にもいえること。今回の不適切発言に関しても優秀なエリート社員だったゆえ、少なからずそういった要素が含まれていたのではないか。そういう意味では失敗こそが正常な考えにつながり得るのかもしれない▼ロシアのプーチン大統領が合理的な判断を見失い、ウクライナに侵攻した。そこにも周囲の環境が大きく影響したのだろう。「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」。英国の歴史家ジョン・アクトンの言葉。一極化した力を持った国王は崩壊するという意味だ。(雄)