和歌山県出身の「体を張った」フルーツ研究家、なんとフルーツだけを摂取し続けて15年近くになるという中野瑞樹さんが、長年の研究成果をギュッと凝縮して詰め込んだ、手元に置いて使える一冊をご紹介します。昨年出たばかり。

 内容 いま日本人に圧倒的に足りない食材、それはフルーツ。それというのも、「果物は甘いから食べ過ぎてはいけない」という認識を皆が持っているから。しかし、フルーツの食べ過ぎについてヒトを対象に長期間調べた実験は存在しなかった。

 著者は「自分の体でフルーツの人体への影響を調べよう」と決意。2009年9月から、肉も魚も豆もイモも野菜もご飯もパンも食べず、水もお茶もお酒も飲まない、フルーツに偏った食生活をスタートした。そしてそれは今もずっと継続されている。

 毎日2㌔ほどのフルーツを食べ、一般的な食べ方をしていたら外皮など大量のゴミが出るのでいかに食品ロスをなくすかを思案してきた。外皮も残さず食べるとなると、気になるのが残留農薬。青果卸売市場に200回以上通い、残留農薬検査の実態調査を実施した。果汁が多いフルーツを切るとまな板や周辺がベチャベチャになることにストレスを感じ、果汁ロスを減らす切り方も編み出した。

 この活動の成果すべてを注ぎ込み、見やすく網羅したのが本書。種類ごとのフルーツの魅力・健康効果・注意点・おいしい食べ方・食品ロスをなくす切り方・目利きポイントなどなど、まさにフルーツのすべてが分かる完全実用読本!

 「マツコの知らない世界」を見たのが中野さんを知った最初。ニコニコと穏やかで大変聡明そうな方だと思いました。私はもともとフルーツが大好きで食べたり調べたり、ビジュアル本を購入しては眺めて楽しんでいたのですが、まさかフルーツだけ食べて健康を維持している人が実在するとは衝撃でした。フルーツ王国和歌山のご出身でお名前も「瑞々しい樹木」、まさにフルーツ伝道師にふさわしい。

 本書では、みかんを冬にたくさん食べると糖尿病リスクが低下、毎日バナナ2本食べ続けると特に若い男性で花粉症の症状が抑制などの具体的な健康効果のほか、「トロトロの甲州百目(柿)をアボカドサラダにのせて食べると絶品」など独自のグルメ情報もあって楽しめます。

 著者は砂漠緑化の研究に取り組んだことがあり、実は世界的に果物の摂取量を増やすことは地球環境のためになるとのスケールの大きな視点で活動しています。「日本人は世界各国と比較して圧倒的に果物摂取が足りない」という事実は近年注目されているらしく、最近の週刊誌の記事でも読みました。本書をきっかけにフルーツの魅力が見直されて大幅に日本の健康度が上がり、地球環境も改善に向かえばいいなと思います。本書を知ったのは、読者の方のお葉書からでした。ありがとうございました。(里)