春は花の季節。県内有数の花の産地である当地方からも、色とりどりのスターチスやカスミ草などが全国各地へと出荷される◆このところずっとヨーロッパの歴史を勉強し直している。そして、花の名前を冠した革命がたくさんあることに気づいた。ジョージア(グルジア)のバラ革命、ウクライナのオレンジ革命、キルギスのチューリップ革命。これら2000年前後から起こった一連の革命は「色の革命(カラー・レボリューション)」「花の革命(フラワー・レボリューション)」と呼ばれる。例外もあるが、暴力を行使することなく成就した革命である◆その先駆けとなったのは今から半世紀近く前の1974年、ポルトガルの「カーネーション革命」。40年以上続いた独裁体制が、ほとんど流血のない無血革命で改められた。革命の成功を知った市民は、首都リスボンの象徴であるカーネーションを手に兵士達と交歓。街角は花束で飾られ、革命軍の兵士は銃口にカーネーションの花を挿したという◆バラ革命はジョージア(グルジア)、オレンジ革命はウクライナの不正選挙への抗議で、武力を用いずに政権交代へとつながった。キルギスのチューリップ革命は完全に成功した無血革命とはいえないかもしれないが、それぞれ暴力を伴わない戦いのシンボルとして花の名前をつけたところに、平和な理想社会を求める祈りの心が感じられる◆3月8日の国際女性デーに、ポーランドへ避難してきたウクライナの女性達に1輪ずつの花が贈られる場面を報道で見た。花に触れた瞬間、女性たちの疲れ切った顔がほころび、微笑が浮かんだ。優しい色の花弁に顔を押し当て、涙する女性もいた◆何も語らず、ただ美しく咲く花々。それは、武器が決して持ち得ない力を持つ。    

(里)